「なぁ、にとって“幸せ”ってなんだ?」

ある日突然、ルフィが真剣な顔で言った。







しあわせ





「…唐突だね。どうしたの?」

食べ物と戦うことしか頭にないと思っていた船長の口から、真面目な質問が出てきて驚いた。
どこかで変なものを食べてきちゃったんだろうか?
…ルフィの場合、実際にやってそうで怖いなぁ。

の幸せについて考えてても答えがでなかったからに聞いてみた」
「そっか」
「おぅ」

私の幸せ…ねぇ?


幸せって何だろ?
たいしてそういうことを真剣に考えたことなんて、今まで一度もなかった。
する必要も、する機会もなかったから。
だから、突然「お前にとって幸せって何?」なんて聞かれてもスラスラ答えられやしない。
たとえ時間があったとしても“幸せ”は漠然としていて形をなさないモノだから‥言葉で上手く言い表せる自信がない。


でもルフィの質問には答えてあげたいんだよなァ…。

ちらっとルフィの方に目をやると、彼は目をキラキラ輝かせてこっちを向いていた。
…答えるしか選択肢なさげだし。

「私にとっての“幸せ”は…」


なんだろう?

今を一生懸命楽しく生きてること?
…それはちょっと違う気がする。

愛しい人と共に人生を歩むこと?
…それも一種の幸せだろうけど、私が求める幸せとはやっぱり違うんだよなぁ。


「私の“幸せ”は――‥」
「幸せは?(ワクワク)」


………。



…………。



……………。



「なんなの?」
「いや、俺が聞いてるから」

やっぱり答えは出そうにない。

「ちぇっ。の幸せってなんだか興味があったのになぁ…」
「なんだか私にもわかんないみたい。ねぇ、ルフィにとって幸せって何?」
「俺の幸せ?」
「うん」

ルフィの幸せ。
凄く興味がある。
やっぱり海賊王になることなのかな?
そうだ。きっとそうに違いない!

「…恥ずかしいからヤだ」
ぷいっとそっぽを向いてしまう。

「ねぇ、お願いだから教えて!」

焦らさないで早く言ってよ。
海なんか見てないで、こっちを向いて、目を合わせて、私にだけにこっそり教えてくれればいいのに。

「…耳かして」



「――‥とメシと笑顔があること」



「…それがルフィの幸せ?」
「おぅ」

とメシと笑顔があれば、俺は幸せだ。


「…なぁ〜に言ってんの」
「いてっ」

照れ隠しにルフィの額をこついてやった。
思っていることを素直に口にできるルフィは凄いと思う。
…ま、この船長にならついてってもいいかなって思えたから、ここまでついてきたんだけど。


「やったな!」
「え?や、私本気じゃなかったじゃん‥ってちょっと!!」

ピシュゥー―!!

前方から飛んできた人差し指を反射的によける。


「ちょっとルフィ!!そんなの当たったら死んじゃうって」
「問答無用!!」

パシュ。

ルフィの腕が元に戻る。
…そんなに楽しそうに笑わないでよ。
うっかり見とれちゃったら、危ないでしょ?

…避けてもまた攻撃してくるだろうから、いっそのこと突き落としちゃおっかな?
海に落ちた後はあたしが助ける方向性で。

「思い立ったら吉日!!ゴメンルフィ」
!?」

ドン!と両手で思いっきりど突いた。
…けど、

みょぉ〜〜ん‥



「ちょっと待って…まさか」


パンッ!!

ゴムの反発する性質のせいで、突き落とすはずが逆に突き飛ばされた。
メリーの顔がどんどん小さくなっていく。
こんな落ちってありなの!?


「ルフィのバカァァアアアァァ!!!」

ザッバーン!!

!?」
ちゃん??おらくそゴム!!ちゃんになにしやがった!!」
「何もしてねぇ!!が勝手に飛んでったんだ」
「…夕食抜き決定な」
「うそぉ〜ん!?」
「よし今こそ出番だ行け我が僕2007番ゾロ!!」
「ZZzzz…」
「医者!!医者!?」


落ちたことを心配してくれる仲間。
いつでもマイペースな奴。
ツッコミ所満載な人。
一緒にいて退屈しない子。


…あ、わかった。


「お前にとって幸せって何だ?」
誰かにそう問われたら、私はこう言うな。

「仲間といる、今が一番幸せ!!」ってさ。




ー―!!どこなの――!?」
「ここだよぉー!」

大好きな仲間に笑顔で手を振る。

ちゅわぁ〜ん!!今助けに行きますからねぇ」
「いや、サンジよりも泳げるじゃねぇか。助けいらねぇって」
「医者は無事か?…あれ??」
「ふぁ〜あ。…何かあったのか?」


こんないい仲間と巡り会えた私は幸せ者だね。
きっと世界一の幸せ者だよ。


「みんな大好きだよぉ〜!!」

「ふふっ。ったら」
が俺にプロポーズを…」
「…ハッ。ありえねぇな」
「マリモの言う通りだナガッ鼻!!もちろん俺に対してだろちゃん?」
「だ、大好き…嬉しくねぇぞこのヤロウw」


ー!!俺もお前のことが大好きだァ――――!!!」




青い青い海のどこかで

世界一の幸せ者は今日もまた

“幸せ”な日々を送り続けています。