自宅よりも落ち着くナルトの家。

…結構内心複雑です。







Dent De Lion





カチャカチャと音を立てながら、食器を洗っていく。
夕食はなかなか満足してもらえたみたいでよかった。
“小さい子にはハンバーグ!”
なんて、馬鹿らしいと思ってたけど案外当たっているのかもしれない。



「ナルト〜お湯加減どう?」
「ん〜…」

浴室から眠たそうな声が聞こえた。
まぁ‥今日はたくさん歩いたしな。
大人の身体に近いうちでさえ結構疲れたから、子どものナルトはもっと疲れているんだろう。
小さい頃は体が小さいからかかる負担も大きいし。
…まさか風呂で溺れたりなんかしないだろうけど、一応あんまり遅いようだったら覗ぞいてみよう。

「今はうち…オトコだしねー」
同性に覗かれるんだったら、別に問題ないでしょ?


食器を洗い終え、手の水滴を払った。
まだ水がしたたっているから拭くのは早いかなー?
‥なんて食器とにらめっこをしながら考える。
とりあえず、まだ整理し終わってない本の類を片付けることにした。







部屋の隅っこに積み上げた本は全部で4束にもなった。
中には開きっぱなしで伏せてあるものもあったので、しおりっぽく厚紙を挟んでおいた。
本を閉じてそのまま積み上げちゃった方が楽だったけど、読んでた所を探すのって結構面倒だからね。

「ってか…小学生のくせにどんだけ本読んでんだよ」

実はあんな顔してめちゃくちゃ勉強できたりしちゃうわけ?
もしそうだとしたらあれだよね、詐欺!
ナルトは勉強はできないけれど、持ち前の明るさを生かしてクラスのムードメーカーをやってるとばかり思ってたのに!!

可愛いふりしてあの子〜わりとやるもんだねと♪

頭の中にそんな歌が流れた。



「うあ―…でもどんな本読んでるんだろう?」

忍者の卵だからやっぱり忍術書ばっかりなのかな?
読んでうちも忍術使ってみたいなぁ…。
火ぃ吹いたり姿消したりできたら絶対かっこいい!
…でも意外と家庭科の教科書とかあったりして?


考えれば考えるほど興味が沸いてきた。
…ちょっと見てみるか。
一番上に乗っていた少し厚さのある小さな本をとる。
表紙には“忍”とどでかく書かれていた。
おそるおそる表紙を捲る…。



――天を
地を――



…うん。全然わかんない。


古文みたいなものなんだろうけど、あいにく古典は得意科目ではなかった。
導入部からこんなに難しいなんて‥やっぱりうちには忍術なんて使えそうにない。

「…ナルトに声かけに行こっと」

何事も諦めが肝心。
だと、うちは思うのです。










コンコン。
「ッうあ…!」

浴室のドアを叩くと焦った声と水音が聞こえてきた。
やっぱ寝てたのかな?

「開けるよ―?」
「ぇ、ちょっ待っ――‥」
がちゃっ。
兄ちゃんッ!!」

湯船の縁に隠れるようにして叫んだナルト。
やっぱり男同士でも恥ずかしいものは恥ずかしいらしい…。
それにしても照れちゃって可愛いなぁ――…


「大丈夫?溺れてない?」
「…いや、別に溺れたりなんかしてないけど‥‥兄ちゃんがいきなり開けたりするから…」

真っ赤になってナルトはごにょごにょと言い訳をする。
そのうち恥ずかしくなったのか、縁にかけた手とタンポポみたいに黄色い頭以外見えなくなった。
嫌がってるみたいだし、今後このような真似はしないように心がけよう。
…からかう時は別として。


「あんまり長湯するとのぼせちゃうから早く上がりなよ?」
「…ブクブクブク」
「それとも一緒に入りたい?」
「ブ――!っぷっ兄ちゃんッ!!」
「冗談だよ冗談」

そんな真っ赤な顔されたら、本気でそうしたくなっちゃうじゃんか。
自宅の風呂に1人でゆったり浸かるのもいいけど、誰かと一緒に入るお風呂は楽しいもんなんだよ?
なんて言ったらどんな反応を示すかな?
笑いながら想像して、風呂場のドアを閉めた。















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