闇が全てを覆い隠す。
星の光は届かず、頼りになるのはまばらにある街灯のみである。
ああ、どうしてこの街はこうも明かりが少ないのか――‥
Dent De Lion
「ナルト!」
「っ!?」
…違う。
「ごめん、人違いだった」
見間違った。
普段なら間違えるはずがなかったのに。
ナルトはこんなにゴツくない。
もっと可愛い。
もっと賢そうな顔してる。
なのに なんで間違ったのか。
それはうちが相当焦っているからだ。
自分でわかるほど、焦っている。
だって――‥
ナルトが居ないんだ…
どこにもいないんだ。
カカシさんはなにも教えてくれなかった。
何を問うても終始無言だった。
けれどそれは優しさ故の行動で…
うちに無駄な心配をかけたくなかったから、何も言わなかったのだと思う。
カカシさんは優しいから。
うちに下手な嘘をついても仕方ないとわかっていたんだろう。
だから
うちに変な術をかけて眠らせ、
姿を消してしまったのだろう。
優しい人が、そんな行動を取るときは、巻き込むまいとしているか、それとも――‥
‥どちらにしても、猶予はない。
焦る。
焦る、焦る、焦る。
ナルト…
お前がいなくなったらうちは――‥
「あの…大丈夫ですか?」
「!?…ぁ、ああ。ゴメンね。大丈夫だから…」
無意識のうちに握りしめていた拳を解き、意識を目の前の少年へと戻した。
「!?お前!!」
・ ・ ・ ・
「探しモノはこれですか?」
クスクスと笑う、その顔は、
見慣れたナルト、そのもので…
「‥ナルトをどこへやった?」
「彼は私達が貰い受けます。あの方が必要とされているので」
貰い受ける?
あの方‥?
こいつは何を言っているのだろう?
訳がサッパリわからない。
ナルトは物じゃないし、誰かが必要としても行くかどうかはナルト自身が決めることだ。
それにナルトを必要としているのは‥うちだって同じことだ。
「お前になんか渡さない。」
「…残念です。むやみやたらと殺すのは好き好まないのですが‥仕方ないですね。
せめてこの姿で楽に逝かせてあげましょう」
そう言って、ナルトの顔で、笑って武器を取りだした。
‥ここは、何処だってばよ?
ふごふごと声にならない声が、息と一緒に鼻から出て行った。
ぎょっとした。
確かに言葉を発したはずなのに、声が音として出て行かない。
口が何かで塞がれてる…?
確認しようと手を伸ばそうとする…
が、縄で後ろ手に縛られているみたいで手首が痛むだけだった。
真っ暗で…
何も聞こえないし…
なんだか頭がぼーっとする…
どうやら目隠しに耳も塞がれ、しかも手に加え足までも縄られているみたいだ。
そして何か毒を盛られた可能性もある…
こんなんじゃ、下手に身動きが取れない。
八方塞がりだってばよ…
前にもこんなことがあった。
俺ってば…俺ってば、みんなに嫌われてるから…。
手足を拘束され、殴られ蹴られ、声も出なかった。
結局、意識を失って、気付いたらイルカ先生がいたんだけれど…
別に死んでもいいと思ってた。
怖いとは思ったけど…でも特別、生に縋る理由もなかったし…。
でも今は違う。
死にたくない。
兄ちゃんと一緒にいたい。
俺には帰る家がある。
だからこんなとこで捕まってるわけにはいかない。
いかないんだってばよ!
「んぐぐぐぐ…!!!!」
渾身の力で縄を外そうともがく。
けれど、もがけばもがくほど縄が食い込み、痛みが増しただけだった。
縄抜けなんて、まだ出来ない。
もっと勉強しとけばよかったと初めて後悔した。
でも――…やるしかない。
諦めるわけにはいかないから。
頑張れば頑張るほどに
徐々に痛みを増していく。
痛みが増していくほどに、
不安が募る…。
…兄ちゃん、
「(俺はここにいるよ)」
――――…
「………?」
真っ暗で何も見えない中で、
何かが動いた気がした。
なんだ?
ガコン――!
耳を澄まさないとわからないほど小さな音と共に、
肌を生暖かい風が撫でた。
前方から何かが近付いてくる。
目も、耳も塞がれて、いるけれど、わかる。
これは、危険だ。
これは、危ない。
全身が訴える。
今すぐこの空間から逃げろ。と。
次の瞬間、強い力でに肩を掴まれた。
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【あとがき】
ありがちですね。