虫の知らせとは、よくいったものだと思う。







Dent De Lion





「ぁっ」

――‥パリーン!!!


盛大な音を立てて、マグカップが割れた。

手が軽くぶつかっただけなのについてない…。
そう一つ愚痴を溢してから、足元に落ちたカップに手を延ばす。
マグカップはものの見事に真っ二つになっていた。
小さな破片もほとんどなく、それこそ元々ヒビでも入っていたんじゃないかという割れ方だった。

…これ、ナルトとお揃いで買ったやつだ。

カップに描かれたキャラクター。
ナルトがいつも寝る時にかぶっている帽子のキャラクターと同じそれ。
買い物途中にナルトが嬉しそうな顔して持ってきたもんだから、買わないわけにもいかず、恥ずかしいのを我慢して渋々買った。
正直、この歳になってまでキャラクターものの食器を使うことには抵抗があったのだけれども、ナルトの笑顔を見ていたら…‥まぁ、いいかって思った。

それなのに。

「なんでよりにもよってこれを割っちゃうかなぁ…」

食器を落として割るだなんて、1年に1回くらいしかしないミスだ。
それをどうして、今日、このカップを割ってしまったのか‥。
悔いても仕方ないとはわかっていても、自然と口からため息が出た。
それと同時に‥なんだか胸騒ぎがした。















その日の午後は、何をしても落ち着かなかった。
掃除をしても、洗濯物を干しても、買い物をしている最中でさえ。
マグカップに加え、午後には写真立ても落として割ってしまったし…
(しかも、割れ方はナルトとうちを引き裂くように真っ直ぐだった…)

日が暮れる頃には、胸騒ぎは不安に変わっていた。
嫌な予感がしてならない。












!ナルトは帰ってきてるか?」

カカシさんが血相を変えて部屋に飛び込んできた。

この時、ピンと来た。
マグカップも、写真立ても、偶然が重なって割れたのではなかったのだと。

必然だったんだ。
虫の知らせだったんだ。


「…まだですよ」
「っ。いや。そうか…いきなり悪かった」
「カカシさん!!」

玄関まで駆けてって、ガシッと強く腕をつかんだ。
前のように姿を消されたらかなわない。

「何?気が変わって、俺と結婚する気にでもなった?」
「茶化さないでください」
「…ざ〜んねん」



「ナルトに…ナルトに何があったんですか?」















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【あとがき】
誘拐されましt(ry