同じ視点には、戻れない。
同じ態度も、もう取れない。
同じになんて…出来ないんだよ。
Dent De Lion
家に帰るのがなんだか気まずくて、里の探索も兼ねてあちらこちらへとさ迷っていた。
すると、公園のベンチで一人、なにやら深く思案しているカカシさんを発見した。
眉間にシワが寄っていて、視線の先にはブランコがあるものの見ているかどうか定かではない。
…重要な任務でも入ったのだろうか?
いつもぼけ〜っとしている変態チックな人だけど、彼にだって仕事が入るのだろう。
職業は忍び。しかもかなり優秀らしい。
忍者の仕事といったら暗殺やそこらか…。
…この人は命をかける任務を、どんな気持ちで行うんだろうね。
「どうしたんですかカカシさん。そんな難しい顔しちゃって」
「………ッ!」
「うわ、ちょ、何!? 離して下さい!」
ガシッと腹部に抱きつき、カカシさんが迫ってきた。
下を向くとやっぱり銀色の頭がうちの腹部に当たってる。
カァーッと顔が赤くなるのがわかった。
とっさに足に力を入れようとして、ふとカカシさんらしくないなと思った。
過剰なスキンシップはいつものことだけど、こちらの呼びかけに応えないのは初めてかもしれなかった。
それに加え、さっきの表情も気になる。
やっぱり…なんか辛いことでもあったのか。
「カカシさん…なにかあったんですか?」
「……聞いてくれる……?」
「俺でよければ相談に乗りますよ」
「……俺と結婚して…」
「あーなんだそんなことですか。今にも死にそうな顔してたからもっと深刻なこと言われるん――…ん?」
今、カカシさんはなんて言った?
オレトケッコンシテ。
オレ ト ケッコン シテ 。
おれ と けっこん して 。
俺 と 結婚 して … ?
俺と結婚して… !?
「け、けけけけ、結婚って!!あんた、馬鹿!!!男同士で結婚なんてできるわけないでしょが!!!」
「恋愛に性別なんて関係ないでしょ」
「おおありだよ!」
「えー」
「『えー』じゃないっ!てかますます抱きつかないで下さいって!!」
腕に込められる力は強くなっていて、もうすでにうち自身の力では抜けられない。
どんなに足掻いても 暴れても 所詮、女。
大のおとなの男になんて、勝てるはずもない。
ので結局はカカシさんが飽きてくれるのを待つしかなく…
その間に自分を落ち着かせた。
心配して損したわ。
「…さぁ、いい加減離して下さい。悪戯ならもう気がすんだでしょう」
「悪戯なんかじゃないんだけど」
「なんですか?」
ドスのきいた声が上から降ってきた。
見なくても彼女がどんな表情をしているのかわかってしまって、思わずため息が出た。
迫っても、にはいつだって悪い冗談や悪戯としてとられてしまう。
スキンシップを図りやすくするために軽いキャラにしたのが災いしたのだろう。
(ま。それはそれで役得だったけど)
加えて、“男同士”という設定。
設定上の同姓にいきなり「結婚して」だなんて言われたら“冗談”として取ってしまうのは普通の反応なのかもしれない。
…でも、もうそろそろ本気だってわかってほしいんだけどな。
「…、お前よく鈍いって言われない?」
「………最近はまったく言われてません」
「前は言われてたってことね」
「…否定は‥‥しませんけど」
「…はぁー…」
本気で 言葉にして 伝えないと、には伝わらない。
手強い相手だ。
でも俺は嫌われてはいない。
出会った当初、は俺に対して素っ気ない返事や行動を示した。
嫌われているのかと思った。
だがそれは俺を遠ざけようとする不快の表現ではなかったのだと、最近になってやっとわかった。
初めから俺を嫌っていたのではなかったのだ。
が俺に示した時々の素っ気ない返事や行動は、が自分に近付こうとする俺に警告していたのだ。
それは俺に限らず(子どもは例外として)全ての人間に対し行なっていたようだった。
自分に近づこうとする人間に、近づく程の価値のないものだからよせという警告を与えていた。
…何故そんなことをする必要があったのか。
“異世界からきた”という事実が、そんなにもネックになってしまっているのか。
「気にすることなんてない。」
そう言ってあげられればどんなによかったか。
…けれど、その事実を知らないことになっている俺はその言葉をにかけることが出来ない。
「…何故お前は――‥男だと偽ったりしたんだ」
「?何か言いましたカカシさん」
上を見上げればすぐそこに、の困惑した顔が。
ま、とりあえずこの子を振り向かせることから始めよう。
は恋愛経験少なさそうだから…
‥ちょっと本気を出そう。
徐々に、徐々に、攻めていこう。
「ま、そういうわけだから。」
「え?………ンん!!!?!」
手始めに触れるだけの口付けを。
「、俺は本気だ」
「な、なななななな…!!」
「なに、もしかして初めてだったとか?」
「…ッ……!!」
可愛い。
頭の中に浮かんだ言葉。
だが、今ここでなんて言葉にしたら、にまた冗談だと思われてしまい結局いつもと変わらない。
言葉は大切にしないといけない。
だからその言葉は飲み込んで、代わりにもう一度キスをした。
ついばむようなキスをした。
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【あとがき】
き、気に食わない…。
絶対書き直してやるんだからッ!!