ラーメン以外を家で調理するなんて、初めてかもしれない。
今まで気にしたこともなかったけどさ。







Dent De Lion





「並べたってばよ兄ちゃん!」
「お、いい感じ。ありがとナルト」

頭を撫でてもらう。
口がにやけるのが止まらない。
とりあえず、えへへと言ってごまかしといた。

イルカ先生や火影のじっちゃんも、よく頭を撫でてくれる。
けどさ、兄ちゃんに撫でてもらうとなんか違うんだよな…。
なんて言うんだろ‥一番表現としては“ふわっとしている”が合ってると思う。
じっちゃんやイルカ先生はポスッって感じ?
手の大きさとか指の細さとか関係してんのかなぁ―…
なんて自分の手を見ながら考えてみる。

兄ちゃん。オレってば次は何すればいい?」
「ん―‥そうだなぁ。もうすぐ用意出来るからナルトは少し休んでていいよ」
「え―」
「ブーブー言わない」
「ブーブー」
「…この駄々っ子め」

オレが手伝えることはたぶん今はない。
だから兄ちゃんは休んでていいよと言ってくれたんだと思う。
ラーメンしか作ったことのないオレは、火加減がわからなくて焼いてた肉を焦がしちゃったし…
しかもその後たまねぎ切った時なんか目が痛くなっちゃって料理一時中断させちゃったし…
なんかもう、あんまり役に立てない自分が嫌になった。
兄ちゃんは焦る必要はないから少しずつ覚えていけばいいよと笑って言ってくれたけど、なんか悔しかった。
結局野菜洗ったり、食器並べたりする他のことは全部兄ちゃんがやってくれている。
…ラーメンなら上手く作れる自信があるんだけどな?


「なぁなぁ何かやることないの〜?」
「あ―‥じゃあそろそろ食べられそうだし、ご飯よそっておいてくれる?」
「よっしゃ!了解だってばよ」

出番だ出番。
机に乗っけてあったお茶碗を手に取り、炊飯器の所までいく。
…ちなみにこの炊飯器、昨日まで台所の戸の中で眠ってました。
一度も使用されたことのない完全な新品です。
もちろんしゃもじも新品です。
ちょっとホコリをかぶっていたのはきっと気のせいです。


「ナルトは明日も学校あるの?」
「ううん!明日はアカデミー休みだってばよ」
「へぇ‥ってことは明日は一緒にいられるんだ?」
「っうん!」

そう。
明日は1日中一緒にいられる。
何をするかまだ決めてないけれど、兄ちゃんと一緒なら何をやっても楽しめそうだ。


「…変だよなぁ」

一緒にいるだけで浮かれるなんてさ。
2日前までは赤の他人だったのに…――





ことっ。

「へいお待ち!イタリアンハンバーグとスープとライス。そしてナルトの作ってくれたサラダ+αでございます」
「うわぁ‥凄いってばよ」

机に並べられた料理の品々。
出来たてのハンバーグは湯気を出し、周りには茹でたとうもこしやにんじん、それに(あんまり好きじゃない)グリンピースが色鮮やかに彩っている。
きっと火影のじっちゃん家の夕食にも見劣りしないと思う。


「もう食べていいの!?」
「もちろん」
「やった!いただきまーす」

パクッ。

「お味は?」
「ん〜美味しい!!!」
「そりゃよかった」

アカデミーの給食で出てくるハンバーグなんかとは比べものにならないほど美味しい。
兄ちゃんにどっかの大名の料理人だったの?って聞いてみたら、笑いながら違うよって言った。
でも、そう考えてもおかしくないような腕前だったんだ。



「――‥やっぱり、どこかちょっと兄ちゃんは変わってるってばよ」
「そう?」
「うん」

だって、オレの側にいてくれるんだよ?
オレが提供できるのは、食事と、寝る場所くらいで無償に近い。
それなのにオレといてくれるなんて十分変わってるじゃんか。
今までに何度か火影のじいちゃんが家政婦を雇ったことがあったけど、どの人も仕事を済ますとすぐに帰っちゃって…
中には初めて顔を合わせて以来辞めるまでずっと会わなかった人もいた。
金を貰うためだけに働く女性たち。
別段気にしてはいなかったつもりだった。
でも、今考えてみると心に冷たい風が吹き込んでいたんだと思う。
それで少しずつ心が凍っていってたんだろうなぁ。
…いつのまにか、じっちゃんと先生以外の大人のこと嫌いになってたし。

あ、わかったってばよ!

温かい目をして、毛嫌いしない態度で、兄ちゃんはオレの心を溶かしてくれたんだ。
きっとだからオレは兄ちゃんといると嬉しくなるんだってばよ。



「どうかしたのナルト」
「ん、別に何でもないってばよ?」
「そう?」
「うん」
「そっか」


どうでもいいんだ。
兄ちゃんがいてくれれば、それだけで。















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