歯車がうまく噛み合わない。
Dent De Lion
「兄ちゃん行ってくるってばよ!」
「ん。いってらっしゃい」
カオ
その表情がイライラする。
けれどもそんな感情は表には出さずに心の中で押さえとく。
たったったっ!と勢いよく家を飛び出した。
退院したその日から、オレの機嫌はすごぶる悪い。
誰に何をされたわけでもない。
誰に何したわけでもない。
ただ、兄ちゃんの態度が少し変わってしまった気がしてならないんだってばよ…
思い込みかとも思ったが、他人の表情を見ながら育ってきたオレだ。
きっと間違ってないと思う。
けれど、変わったのはオレに対する態度だけであって、他のやつらに接する時はいつも通りの対応だ。
それどころか、むしろいつもよりも…
みんなに同じ態度をとっているなら、オレだって――そりゃ心配もするだろうけど――何か嫌なあったんだろうなって思って兄ちゃんに聞いたと思う。
でも兄ちゃんが態度を変えたのはオレだけで…
もし兄ちゃんに聞いて「気のせい」と言われてしまえば、そこで終わってしまう。
だから面と向かって兄ちゃんに聞けない。問い詰められない。
もどかしい。
ギュッと唇を噛んだ。
それはオレの今を表すのに最も相応しい言葉なんだろうなと思った。
天が高くて
空が青くて
なんだか無性に泣きたくなった。
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