バイトも、ナルトとの仲も、怖いくらい順調だった。
でも、全てがずっと上手くいくはずなんてなかったんだ。







Dent De Lion





その日はいつもより早くバイトが終わった。
元々夕方までには帰れるスケジュールだったんだけど、それが3時に終わっちゃったもんだから、うちは暇を持て余していた。

――‥最近は手の込んだものを作ってやってなかったからなー。

言っておくが、決して手を抜いていたわけではない。
ただ単に時間短縮のために、手間かけた料理を作らなかっただけだ。
だってナルト帰ってきて開口一番に「兄ちゃんご飯は!?」って側にくるんだよ?
隣でまだかまだかとせがまれてしまったら…
 ナルト
可愛い弟のためだ。
手早く旨いものを作らねば!
…と思ってしまうのも致し方あるまい。


「手の込んだ料理…か」

何かあるかな?
和食?洋食?それとも中華?はたまたイタリアン?
…フランス料理だけはちょっと作れないけれど、それ以外なら何でもいける。
ナルトの好きなもの…っていったらラーメンだけど、やっぱりラーメンは一楽で食べたほうが美味しいよなー。

「へい兄ちゃん!今日は大根が安いよ」
「え、あぁそうなんですか」

よく野菜を買いに来る八百屋さんの前を通り掛かると声をかけられた。
見れば大根50円!と赤文字でデカデカ書かれている。
しかも大根のサイズもデカイ。
(きっとサイズオーバーで市場価格より安くなっちゃったんだろうな)
…これは確かにお買い得だ。
買うしかない。
さっき魚屋でぶりも安かったことだし、今日はぶり大根にしよっと。


「はい。おまちどうさん!」
「あ、どうも」

ケチな性分のおかげで今日の晩ごはんは決まった。
そろそろアカデミーの授業も終わる頃だ。
久しぶりに迎えにいってやるか。















「…遅いなー」

徐々に少なくなっていく生徒たち。
賑やかな声はやがてしなくなった。
始業のチャイムが鳴るのを、もう数回は聞いたというのに…ナルトは姿を現さない。

…もしかしたらうちがここにくる前に、すでに下校していたのかもしれない。

そう考えて踵を反す。
日は傾き、空には星が瞬き初めていた。










「――兄ちゃん…」



「ナルト?」
今、なんとなくナルトに呼ばれた気が…

声は左の路地から聞こえた。
迷ってしまっては困るので、未だに通ったことがない道。
薄暗く、はっきりと奥までは道が見えない。
家に帰る方角とは違っているけれど…嫌な予感がする。

行った方がいい。

いや、行かないといけない!


早足で歩く。
街灯の少ない暗い道。
胸が騒ぎ、いそげいそげとさらに急かす。


「何もなければいいけれど…」


けれども嫌な予感というものは、本当によく当たるものなのだ。






…幸せなんて長続きしない。






「…嘘、だろ……ナルト…っ!」






ほら。


耳をすませばすぐそこに 崩落への足音が。
















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あとがき
このまま、のほほ〜んとした時間を過ごさせてあげようか悩んだので すが、
でれでれしすぎなので、ここいらでちょっとシメとこうかと…(ぁ

ちなみに書いておきましたが主人公はナルトを弟のように思っていま す。