華美な花より、質素な花がいい。
控え目なあたりがなんだか共感できるから。
Dent De Lion
「ちょっと待ってて下さいね。今お茶持ってきますから!」
「あ。お構い無く…ってもういないのね」
まぁいいか。
せっかく歓迎してくれているんだ。
少しゆっくりさせてもらうとしよう。
花特有の甘い香りが満たす部屋。
その室内に所狭しと並べられた色とりどりの花々は、精一杯の輝きを放ち、咲き誇る。
どの季節にどの花が咲くのかほとんどわからないような、季節感のないうちからすれば、花屋の娘だなんて羨ましい。
(昔は、春は桜、夏は向日葵、秋はコスモス、冬は…雪が降るから花なんて咲かないじゃん!と思い込んでいたほど季節に疎かった)
「実家が花屋か…いいなぁ」
コトッ。
「そうですかー?でも花屋の娘なんて店の手伝いしなきゃならないし面倒なだけですよ。あ、さん紅茶でよかったですか?」
「ん、わざわざ淹れてくれたんだね。ありがとう」
促されるまま席につき、出された紅茶をすする。
…美味しい。このせかいにも紅茶ってあったんだ。
この子は当たり前のように感じているであろうその居場所、環境、家
族。けれど世界にはそのとても心地よいモノたちを持っていない子だっているんだよ?
まだ小さな山中さんに分かれだなんて言わないけれど…悲しいね。人
は奪われたり、失ったりしないかぎり、その大切さに気付くことができない。
うち自身もそうだった。だから…――失うことを何よりも恐れてる。
ふとテーブルの上に置かれた花瓶に差された紫色の花が目についた。
淡い紫の小さな花が寄り集まって咲いており、葉っぱはハートの形をしている。
花が密集して咲くあたり、どこかキンモクセイに似ているかもしれない。
強い香りではないのか、こちらにまでは匂ってこないが。
「…この花は?」
「これですか?ライラックっていうんですよ。花言葉は色々ありますけれど…私は“初恋の感動”ていうのが一番好きだなー…。
あ!これは売り物じゃないのでたとえさんであっても絶対売れません!!」
「そ、そっか。残念だな」
妙に迫力のある言葉に気押される。
そんなに大切な花なのだろうか?
「誰かにあげるの?例えば―――花言葉の“初恋”の人とか」
「え! ……や、やだなぁさん。たまたま歩いていたら幸せになるという花びらが5枚のライラックを見つけたからって
それをサスケ君に渡して喜んでもらおっかな〜なんて思って持ち帰ってきちゃったわけないじゃないですかー!!」
ばしばしばしばし!
「あた、いたたた」
図星で照れ隠し…なんだろうけど、こうもバシバシ叩かれては痛い。
眩しいくらいの笑顔が素敵だけど、山中さんちょっと力込めすぎだって…
あ。そういえば、ナルトが前に山中さんに殴られてその場でうずくまっていたことがあったな。
うちの場合パーだから、まだましなんだろうけど。
‥やっぱりこの子、力加減というものを覚えたほうがいいと思うよ。
「とにかくその話は置いといて〜、さんには大好きな花ってありますか?」
「(あ。叩くの止めてくれた)大好きな花か。んー‥好きな花ならいくつかあるけど“大好き!”ってほどじゃないかな」
「じゃあ大好きな人を思い浮かべた時にその人のイメージに合う花は?」
大好きな人。
いつも、側にいてほしいと思うのは――‥とナルトかな。
「ヒマワリとタンポポ」
本当は二人とも太陽みたいで、最初はヒマワリっぽいなって思った。
けどナルトは…ヒマワリというよりは、タンポポかもしれないって考え直した。
タンポポってどこにでも生えているなんでもない草だけど、
冬の厳しい寒さにも 冷たい雪にも負けないで、その暗い地面に葉を広げて地中深くに根を下ろし、ただ春が来るのをじっと待っている。
どんなに風に吹かれても、どんなに人に踏まれても、その先にある日だまりだけを信じてじっと耐えている。
そんな姿がナルトに似ていると思った。
…彼は今、辛い冬の時期なんだと思う。
やがて到来すれ春に、その花を咲かせることだけを夢見てる…――
「ヒマワリはわかりますけど…タンポポ、ですか」
「うん。あの子は絶対タンポポだよ」
「(そんな笑顔で言われちゃったらなー)さんには大好きな人2人もいるんですね〜」
肯定の意を込めて、ニコッと笑ってやると山中さんは「はぁ」とため息をついた。
よくわからないけれどなんだか山中さんは納得できないみたいだった。
…あ。ナルト植物好きだったっけ?
せっかくだし、何かお土産にしてあげよ。
よくよく考えてみると、うちからナルトに何かをあげたことってなかったもんな。
「山中さん。一緒に花、選んでくれないかな?」
「別に構わないけど…っじゃなくて構わないですけど」
「ありがとう。とびっきり豪華にしてね!それと敬語はいらないから」
「へ?」
さてどんな花束にしよう?
幸いなことにお金は結構あるし…
ナルト、喜んでくれるかな?
「さんまたきてくださいねー!」
ブンブンと勢いよく手を振るいのちゃんに苦笑しながら応えて、帰路につく。
美しく、ドでかい花束を抱えながら。
…うん。いくらなんでも豪華すぎた。
前が見えないくらい大きな花束になるなんて思いもしなかった。
破格のお値段だったから金銭面では問題ないんだけれども(むしろいのちゃん家の方が心配なんだけど)
これ、どこに飾ろう…
ドンッ。
「ん?」
何かにぶつかったみたいだ。
体を90度回転させてその方向を見てみると、男の子が一人尻餅をついた体勢で転がっているじゃないか。
サラサラな黒髪を見てどこかで会ったことがあるような気がしたが…
たぶん黒髪短パンのその姿が、昔近所に住んでいた小学生に似ていたんだな。懐かしい。
ってそんなこと考えてる場合じゃない!
「ご、ごめんね!大丈夫だっ「…ウスラトンカチ」…へ?」
今、この子が言ったんだよね?
ウスラトンカチ…
ウスラトンカチって…
何?
かつ。かつ。かつ。かつ。
「あ、ちょっと…!」
引き留めようとするが、あいにく両手は手一杯。
そのうちウスラトンカチ少年は行ってしまった。
「怪我もなかったみたいだし…いいか」
よいせ。と花束を抱え直し、今度は人にぶつからないように気を付けて進んだ。
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【あとがき】
文章がまとまってない。
いらいらする。
書き直したいなー
(時間があったら)