やればできる。

やればできる。

そう自分に言い聞かせ。







Dent De Lion





いつもと変わらぬ商店街。
そこで出会ったげじげじ眉毛…

「やぁ少年!また会えたな!!」
「……ど、どうも…」

あぁ、なぜよりにもよってこの人なのか。
【自ら進んで友達を作る】という目標は早くも折れてしまいそうです。
よくよく考えてみれば、ここは、前に逆上した引ったくり犯に襲われたその場所だった。
いやはや懐かしい。あれからもうずいぶん経ったものだ。
成り行きで表彰状を与えられてから、バイト先が決まって、それから…ん?まてまて。
何か思い出さないといけないことがあった気がする。
「感謝状の1枚や2枚くらい贈呈しないと!!!」
…表彰状を貰えたのはもしやこの人のおかげなんじゃないか?


「あ、あの…以前、感謝状がうちに届いたんですけど、あれってあなたのお「そうかそうか!いやいや君の青春の成果が認められてよ かったな!ハッハッハッ」
「…あ、えと、ありがとうございま「いやいやお礼を言いたいのはこちらの方だよ。まったく‥あの時の君の体術ときたら…――本当に素晴らしいとしか言いよ うがなかった」


あ、うん。
喋り終わる前に言葉を被らせるのは…わざとじゃないよね?
でもそんなことは問題じゃない。
もっと深刻なのは―――…

「で、できれば顔を遠ざけていただけると…」
「ん?あぁ、すまんすまん」


黒い2匹の芋虫が目の前から遠ざかる。
ゲジゲジ眉毛のドアップというきついものからやっとこさ解放された。
いやぁー本当に助かった。
うち…髪の毛のつやがよくてキューティクルも不足していない人のことを気持ち悪いと思ったのは初めてだったし。
というかこのセンスのかけらもない服装はなんなのだろう?
素でひく…。


…やっぱり無理だ。

この人とは友達になれそうにない。
心の壁うんぬんかんぬんの前に、身体が拒絶反応を起こしている。
悪い人じゃないんだろケド、うちにはキャラが濃すぎるな…よし。適当に切り上げて別れよう。


「すみませんがこの後ちょっと予「そうだ君!この後暇かい?俺と一緒に青春しにいこうじゃないか!!」…はい?」
「そうかそうか!うーん…となると今日みたいに暖かい日はやはり雪解け水で寒中水泳でもして身体を鍛えると言うのはどうだろう?そ れとも死の森で――」
「ちょ、ちょっと待ってください!」

ダメだ…この人の暴走ぶりについていけそうにない……。
寒中水泳なんて冗談じゃない!
確かに今日は暖かい。
けれど、水はまだ冷たく、しかも雪解け水だなんて…考えただけでも恐ろしい‥‥‥!
てか死の森って、名前からしてかなりヤバそうじゃないか。
無理だ。うちはまだ死にたくない!
神様。うちは少し高望みしすぎました。
やっぱり友達なんていらないです。
うちにはナルトという弟のような、大切な存在がいます。
それだけでもうおなかいっぱいゴチソウサマデス…!
だから家に帰っておとなしくご飯でも作らせてくださいお願いしますどうかこのゲジゲジ星人との縁を切ってくださ――…


ぱしっ。


「さぁいこうじゃないか!共にあの夕日に向かって走ろう!!」
「い〜や〜で〜す〜〜!!」

腕を掴まれ、引っ張られる。
お祈りの効果は0だった。
もしかしたら神様も、このゲジゲジが苦手だったのかもしれない。
真っ昼間で夕日なんて出てるわけないのに、いったいこの人はうちをどこに連れていく気でいるのか。
もう誰でもいい。誰でもいいからこのゲジゲジからうちのことを救ってくれ!
ゲジゲジなんか大ッ嫌いだーーーーー!!!




バチンッ!!


「…え?」

平手打ちでもかかましたような音と共に、掴まれていた手が自由になる。


「な〜にやってんの、ガイ」
「……カカシさん…?」

ゲジゲジ星人とうちとの間に立ちふさがるようにして現れたカカシさん。
なぜだろう…今日は眩しく輝いて見える。
カカシさんタイミングよすぎだよ!あんたはうちの救世主だ!
ありがとうカカシさん。大好きだよカカシさん。
…というわけで2人がいがみ合っている今のうちに逃げよう。


「邪魔をするなカカシ!俺は君との絆を深めに―――」
「絆?何それ。は嫌がっていたように見えたけど?」
「ハッハッハ。そんなはずない!さぁ君。俺と一緒に汗をかきに行こうじゃないか!」
「一緒に、汗を…?…ガイ。に近づかないでくれる?は俺のモノなんだから」 「違う。…て、ぁ」
「「………」」

…誤解を招くような発言に思わず突っ込んでしまったことを激しく後悔した。
あと少しで路地裏に続く道へと駆け込めたのに、2人にバレてしまっ…!!!
次の瞬間、ゲジゲジと覆面が目の前にあった。
そしてなぜだか両手首を握られていた。
右手はカカシさんに。左手はゲジゲジ…改めガイさんに。

「きききき急に迫ってこないで下さい心臓に悪いです!そして手を離してください!!」
「あぁすまんすまん。君がこの場からいなくなるような気がしたものでね」
「いや〜不本意ながら俺もガイと同じことが頭をよぎっちゃったんだけど…まさか が逃げるなんてこと、ないよね?」
「……………………ァ、アリマセーン」



ナルト。ゴメン。
うち、今日帰れないかもしれないわ。





「で、ガイ。なにどさくさに紛れての腕掴んじゃってるの?早く離しなよ」
「お前の方こそ離したらどうだカカシ」
「いやー俺はこれからとデートの約束があるんだよねー。だから無理
「ふんっ。そんな嘘長年ライバルをしてきた俺にはお見通しだぞ!」
「…自称ライバルでしょ。じ・しょ・う


あ。
よく見ればガイさんの手の甲、もみじみたいに綺麗に赤くなってるよ。
さっきのバチーンって音はきっとカカシさんがガイさんの手をひっぱたいた音だったんだね。
うーん。毛が濃い。



「じ、自称…」
「さ。わかったならさっさとその手を離せよガイ」
「っよーしわかった勝負だ!」
「…なに、やるの?」
「う、受けるのか?今で散々戦わなかったお前が…」
「悪いが 手加減しないぞ」


早く家に帰りたいなー
手ぇー離してくれないかなー
周りの人の視線がめちゃくちゃ痛いなー



「‥‥‥珍しいな。お前が好戦的なんて」
「…ま!をガイなんかと2人っきりにさせるわけにはいかないからね〜」


通行人のみなさま。
そんな目で見ないで下さい。
そんな目で見るくらいなら、うちのことを助けてください。
目が合った回数分、お金取りますよ?
1回500円でどうですか〜


ガシッ!!

「というわけで君!」「っすみませんでしたお金は取りませんーっ!!」
…話聞いてなかったでしょ?」
「…あは、あはははは……」

笑ってごまかすしかない。
で、なんの話でしたっけ?と聞きなおすと双方に呆れられた。
しかたないじゃん!暇だったんだよ!


お2人曰く、これから勝負をするので判定をうちにして欲しいとのこと。
何の判定かと尋ねたら「「デートの誘い文句(だ)」」と言い切られてしまった。
…おかしくない?ねぇこの人たち絶対おかしいよね?うちの常識が外れているわけではないよね?
確認のために「その判定をするのは俺でいいんですか?」と聞けば、返答はもちろんYesで…
こんな勝負をするのもおかしいとは思うけど、判定を(一応今は)男に任せるのは間違ってるでしょう?


…でも、聞く耳なさそうだよなぁ。


カカシさんは腕を組み、なにやらぶつぶつと考えているし。
ガイさんは1人で雄叫びをあげて、いや違うとまた叫んでいるし。
何なのこの人たち?
忍者ってこういう生き物なの?
それとも木の葉の里の忍者が特殊なだけなのか…
とにかく、この2人の勝負につきあってやるしか選択肢はなさそうだ。
カカシさんはともかく…ガイさんにデートに誘われるのは気が引ける。
卒倒しないように気を引き締めてかからなくちゃ…!
















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