…作戦決行だ。







Dent De Lion





ベンチに座り、ぼーっとブランコに乗っている子ども達を眺めながら、ナルトがトイレから出てくるのを待っていた。
忍者のカカシさんが消えてからしばらくして、ナルトが唐突に「トイレに行きたい」と言い出したもんだからあの時は焦った。
トイレに行きたかったならアカデミーで行ってくればよかったのに…
でもまぁナルトのおかげでカカシさんから解放されたしなー。


「お待たせだってばよ!」
「ん‥じゃあ行こうか」

ナルトが出てきたのを確認してから立ち上がる。
よっこいしょ…って言ったらジジ臭いと笑われた。
‥どうせもう歳だよーだ。




「なぁなぁ!兄ちゃんってばさ、さっきの犬のお面の人とお友達?」

歩いているとナルトが意味ありげに笑いながら問いかけてきた。
…なんであんな変な人と友達にならなくちゃいけないんだろう。
ナルトの目から見ると、そういう風に写ってしまったのだろうか。

「あの人はただの顔見知りだよ。友達じゃない」
「…ふぅん」

あの人は何故かここ最近付きまとってくる不思議な人だ。
不思議‥というよりは変と言ったほうがいいかもしれない。
わざと素っ気ない返事をしたり、わざと突き放すような行動をしていたというのに離れていこうとしなかった変な人。
…なんだか色々な意味で驚かしてくれる人だ。


兄ちゃんって友達いるのかってばよ?」
「…ずいぶんとまた直球だね」

子どもっていうものは怖い。
大人は決して踏み込まない領域に土足でずかずかと入ってくるのだから。
遠慮なく。常識なんてものは跳ね退けて。
しかも…悪気がないだけにたちが悪い。
その分、こっちも素直になれるから何とも言えないけれど。


「今は遠い所にいて会えないけれど‥俺にもちゃんと友達はいたよ?」
でも携帯のアドレス帳には100人近くの名前が登録されていたとい うのに、うちにとっての友達はただ一人だけだった。
「じゃあこの里にはいないの?」
「…いない、かな」

自分で言ってて、悲しくなった。
あ、でも最近日向ちゃんとはよく話すようになったな。
女だということを隠しているのは大変だろうからと、色々と話し相手になってくれるし…まぁうちはナルトのことやらアカデミーのことで相談に乗ったりして。
…それにしても、今日はなんだか変なことばかりを聞いてくるな。
好奇心旺盛なのはいいことだけど、こう答えづらいことばかり言われると…なんだかなぁ。


「じゃあ兄ちゃんにとって友達って何?」
「友達?」
「そう友達」


友達。

うちにとっての友達は――…


「そうだなー。信頼できて…なんでも打ち明けられて。でも依存し過ぎない、持ちつ持たれつな関係を築ける人、かな?」

「…兄ちゃんは友達がいないっていうけれど……俺にはそう見えないんだってばよ」
「え?」
兄ちゃんにとっての友達っていうのは…なんつーか、きっと親友とかそういう濃い関係なんだってばよ。
でもさ、いきなり初めて会う人にそんな濃い関係を求めても無理なんじゃないかな?」


…確かに。
言われてみればその通りだ。

けれど、こっちが友達だと思っているのに向こうは友達だなんてこれっぽっちも思ってなかったら…
虚しいと 思ってしまう。

一方通行の想いなんていらない。
本当に信じられる友達 本当に信じてくれる友達だけが…――欲しい。



「…もしかして兄ちゃん、友達になるのって怖いことだと思ってる?」
「え?」

なんでわかったんだろう…
もしかして顔に出ちゃってたのかな?


「友達になることは、スッゴく楽しいことだってばよ?
それに怖がっているだけじゃ前には進めない。
進まないと先にあるものが見えてこない。
兄ちゃんには突き進む力が―資格が―あるんだから頑張ってその心の籠ん中から一歩踏み出してみろってばよ!」


…今まで言われたきた中で、一番ずっしりきた言葉だった。
ナルトに言われたからだと思う。
他の人に言われたって、軽く受け流していただろうし。


「ぁ…気をわるくしたなら謝るってばよ」
「…いや、ありがとうナルト」

軽く頭を撫でてやる。
えへへと笑うナルトを見て、ちょっと変わってみようかなと思った。





視野を広げて見てみれば‥

一歩踏み出した世界はきっと――‥


何かが違って見えてくるはずだから。
















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【あとがき】
友達なんて考え方次第…。
ナルトの言っていたことは私が大切な人に言われたことです。…大好きです(どうした

お気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、カカシがナルトに化けてます。
ナルトはこんな小難しいこと言わないんじゃないか…?という管理人の配慮。
でもこれでカカシとの関係も温かみのあるものになれるよ!


…たぶん。