策を練るなんて高等な才能、うちにはかけらも存在しませんでした。
Dent De Lion
作戦1.嫌がらせをされたらすぐに追いかける。
結果:失敗。
作戦2.尾行されているとわかった時にはすぐにかけ戻る。
結果:尾行されているのかすらわからなかった。
作戦3.先回りされている可能性を考慮して走りぬける。
結果:生まれて初めて漁業網にかかりました。
「…うちにどうしろと?」
解決策、未だに見当たらず。
これ以外の作戦、皆無。
どうしよう。いや、どうにかしないというのは分かってはいるけれど。
作戦を行っていてわかったことは、いくつかあった。
嫌がらせはほとんど午後に行われること。
こっちを害そうとは考えていないようなこと(命を狙われているわけではなさそうってことね?)
そして、嫌がらせが幼稚な気がするということ。
近所のがきの悪戯かとも思ったが、ここまで見つからないのはおかしいと思い、その考えは捨てた。
いくらなんでもこっちだって必死で追いかけようとしたし、姿も見えないのはどう考えてもおかしい。
だとしたらなんなんだ!と聞かれると、また詰まってしまうんだけれども…
なんなんだろうね。
ホント誰かに聞いてしまいたいくらいだし。
「やっぱりあれかなー…忍術ってやつ?」
忍びの国というくらないんだから、やっぱり忍術を使用されてしまっているのだろうか。
だとしたら近所のがきでも説明がつく。
…そういえば一回、水鉄砲かけられてホースで仕返ししたことがあったな。
もしかしてそれの逆恨み?
そんなことで忍術とか簡単に使っちゃったりしちゃうの?
うわ怖っ。怖いんだけど忍びの里!
「ただいまだってばよ!」
「あ、お帰りナルト。お風呂入れるから入っちゃいなー。さてと、俺はご飯作らないとねー」
ぱっと頭を切り替えた。
なにもうちもやられてばかりでいたわけではない。
パターンがほとんど決まっていると気付いてからは、避けられるものは全て回避した。
帰り道をできるだけ変える様にして、自ら進んで罠にかかるようなことはしないようにした。
(気分はストーカーから逃げる女性みたいな感じで)
こうして回数はめっきり減ったのだ。
犯人が子供じゃないかと疑っているのはその辺も関係している。
「…でもこないだの嫌がらせはきつかったなぁー」
ジューッと焼けるパプリカやらにんじんやらの色鮮やかな野菜たちをみて思い出した。
それはまだ帰り道を変えるという所まで頭が回ってなかった頃。
バイトが終わって上下左右に気を配りながら歩いていると、目の前に猫が1匹座っていた。
首に首輪がついているから飼い猫なんだろうなーなんて思って近づいてみると、上から何かが落ちてきて…。
油断したと思った時には遅かった。
猫はすぐに逃げてしまい、その場に残ったのはうちと通行人だけで…
その通行人が「…変態」と小さな声で吐き捨てて言ったからなんだこいつは!と思って自分の頭に乗っていたものを手に握り締めて怒りを抑えたわけだけど。
よく見てみるとそれは女性物の下着だった。
しかもあれだ。
色鮮やかなブラジャーとか、透け透けでこれ下着の意
味をないしていないだろ!って感じの総レースパンティー。
こんなんうちが着る日は一生こないだろうなと苦笑いを浮かべ、そのままにしておくわけにもいかないからと周りに落ちていたものを拾い集めて。
そこでやっと、今の自分は【女】じゃなくて【男】だということを思い出した。
「そして運悪くその現場を見てしまったらしい眉毛の太い三つ編み少年が顔を真っ赤にし、絶句して走り去って行ってしまったというわけです」
知らない子だったけど、教育上よろしくないものを見せてしまった。
あの子にはホント悪いことをしたと思うよ。
今度見かけたらなんか奢ってあげよう。
…逃げられなければだけれど。
「ナルトさ、なんか忍術使える?」
「ん?忍術?もちろんだってばよ!」
だってオレってば天才忍者だからさ!
と嬉しそうに語るナルト。
「じゃあさ、ちょっと俺に見せてよ」
「…え」
「だめ?」
「ダメじゃないけど…今?」
「んーできれば今がいいんだけど無理にとはいわないよ」
「………」
なにやら悩んでいる様子。
家の中では狭いからできなかったりするのかな?
それとも忍術を使うにはなんか制約みたいなのとかあったりして…?
「…今日習った分身の術でよかったらいいってばよ」
「本当に!?」
おぉ!生忍術!
机をずらして端に寄せる。
やっぱり葉っぱを頭に乗っけたりとかはしないんだね!
分身の術ってことはナルトが二人に増えるのかな?
あ、でも忍者○ットリ君では片手じゃ収まらないくらいの数がいたけど…ナルトがいっぱいって…想像できないな。
どんなのだろう?わくわくする。
「い、いくってばよ…」
ごくっと生唾を飲み込む。
ナルトが指を組んで、何かを言った。
次の瞬間、ボンッという音とともに白い煙が充満して何も見えなくなった。
げほげほと咳き込みながらナルトが元いた方を見つめる。
と、人影が2つ見えた。
「「おぉ!」」
ナルトとナルトとうちが歓喜の声をあげた。
目の前に、ナルトが2人立っていたのだ。
しかもそっくり。
まるで双子だ。
すごい!漫画みたいだ。
「やっぱりオレってば天才だってばよー!」
「うんうん天才天才ー!」
わぁーいわぁーい!とナルトとナルトとうちで手を繋いでくるくる回る。
どっちが本物なのか見た目では分からないけれど、きっと今喋っていたほうが本物なんだろう。
そのうちどろん!というにふさわしい音がして、片方のナルトが消えてしまった。
けれど、うちらの笑顔は消えなかった。
「やっぱりナルトはすごいねぇ。ホント天才だよ」
「だろだろ?でもホント上手くいっ
てよかった」
「ねぇねぇナルト、うちにもさっきの手だけ教えて!」
「ん?いいってばよ」
ただ、印を組めるだけじゃ術は発動しないからね?
と、釘を刺されてからどうやって指を動かせばいいのかを教えてもらった。
「こうして、こう。でいいんだよね?」
「うん。で、そこで『分身の術!』って言ってオレらは術を発動させる
んだってばよ」
「そっか。分身の術!かぁ…うえぇ?!」
ボンッ。
「「………」」
嘘ぉ。
え、だって…え?
なんでうちの周りにうちがいっぱいいるのさ?
術が使えた?
でもこの人数はハンパないぞ?
ん?ん?ん?
「な、ナルト…これどういう…?」
「………」
だめだ。
完全に放心している。
うちは…どうすりゃいいのでしょう?
Backl
Next