こんなにも偶然が重なることがあるのだろうか。
Dent De Lion
ビクビクしながら里の中を歩く。
右を見て、左を見て、上を見て。
安全を確認したら猛ダッシュで進む。
「…何しているんだうちは」
そして陥る自己嫌悪。
最近、偶然とは形容し難いほどに、不運が重なっている。
晴れているのに上からじょうろで水が降ってきたり。
曲がってすぐのところにバナナの皮が置いてあったり。
まぁ例をあげたらきりがなくなってしまうからこれくらいで止めておくけれど、こんなことが連日続いているのだ。
明らかに意図的なものである。
けれど、うちはこの里にきてから人に恨まれるようなことはした覚えはない。
以前、ナルトのことをいいように思っていなかったおっさんの視線を察知したことがあった。
今回もその力を使って犯人を見つけてやろうと思ったが、なぜか今回は適用されないらしく、犯人が割り出せないでいる。
当初は放っておいてもいいかと思った。
けれど、連日チミチミした嫌がらせが続くとこっちもなんだか精神的に参ってくるようで…
「ちゃん♪」
「…はたけさん」
「うわ何その心底嫌そうな顔。俺傷付いちゃうなー」
全然傷ついているようには見えない。
この人は何故かここ最近付きまとってくる不思議な人だ。
不思議‥というよりは変と言ったほうがいいかもしれない。
わざと素っ気ない返事をしたり、わざと突き放すような行動をしていたというのに離れていこうとしない変な人。
こないだべたべたしてきて胡散臭かった時に「半径1m以内に近づいてこないで下さい」って言ったら本当に1mぴったりに間隔を開けてついてきたもんだから
驚かされた。
「なんで今日は犬のお面なんてつけてるんですか」
「えーだってちゃんが『覆面をした怪しい人の隣を歩きたくありません』ってこないだ言ってたでしょ?」
「あー…そうでしたっけ」
よく覚えていないが、なんだかそんなようなことを言ったような気がする。
だからといって犬のお面なんか被ってこられても…余計目立つじゃないか。
忍者の感覚ってよくわからない。
そういえばこの人…かなり出来る忍者なんだっけ?
前に自己紹介と題して自分のことをべらべらと並べていたときに言っていたのを思い出した。
もし、お願いしたら、このちまちま事件の犯人捕まえてくれたりするかもしれない。
「…ん。どうかした?」
でもやっぱりはたけさんには―――…相談できないよな。
顔を知っている程度で、そんなに互いのことを見知った関係でいるわかじゃないし。
この人とうちが、友達だったら話は変わっていたけれど、仕方ない。
自力で解決しよう。
「え?何々もしかして俺があんまりカッコイイから見惚れちゃったの?んーちゃんが俺に惚れ「ありえません」……残念」
うん自力で解決しよう。
この人に頼ろうなんてどうして考えちゃったりしたんだろ。
無駄な時間を過ごした。ドンマイ自分。
ちまちま事件なんかなんとかなるさ。
「ところで、ちゃんはいつになったその『はたけさん』ってのをやめてくれるのかな?」
「はたけさんはいつになったら『ちゃん』って呼ぶのをやめてくれるんでしょうね」
「えー…だって可愛いでしょ。ちゃんの方が♪」
「男が可愛いなんて思われても嬉しくありませんから」
解決策を考えないとな。
まずはちまちま事件に対する策を練らないと。
次に犯人確保。
この犯人はうちが一人の時ばかりを狙ってきているみたいだから…まぁいいや策を練るのは家でにしよう。
「…どこまで付いてくるんです?」
「どこまでもv」
「…お仕事行かないでいいんですか」
「ちゃんと一緒にいたいからいいの」
「…ハァ……」
疲れる。
こういうタイプの人は苦手だ。
おちゃらけた仕草をして、肝心な所ははぐらかす。
こっちはこれからない頭を振り絞って犯人逮捕の策を練らないといけないのに。
…いらいらしてきた。
だめだ。カルシウム不足だ。
今日はカルシウムを大量に摂取できるような晩御飯にしよう。
何にしようかな〜。
迷うな。冷蔵庫の中には何が残ってたっけ?
「ちゃん無視するなんて俺寂しいんだけどなー?」
「………」
せっかく意識を別の方に飛ばせたのに。
今日は心理的に相手をしている余裕がない。
さっさと帰りたい。
となれば、あまり気乗りはしないが最後の手段だ。
「今日は急いでいるのでまた今度ゆっくりお話しましょうね。カカシさん」
「…え?」
面食らったって感じの顔だった。
なんであそこまで下の名前で呼ばれることにこだわっていたのか分からない。
が、まぁ願いが叶ったわけだし、今日はこれで引き下がってくれるだろう。
…本当はこっちとしてはちゃん付けをやめてもらうためにこの切り札は残しておきたかったんだけどな。
「っちょっとおばちゃん!!俺に名前で呼ばれちゃったよ!」
「んあー!その辺の善良な一般市民に絡むなっ!!」
結局ちゃん付けでよばれることはなくなったが、代わりに呼び捨てで呼ばれることとなった。
………ハァ。
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