馬鹿は風邪をひかないなんてやっぱ迷信だったのかねぇ?







Dent De Lion





「…なんで俺がこんなもん届けなきゃならないんだ」

面倒くせぇ〜。
と一人ごちながらのんびり歩く。
迷信なんて所詮迷信だ。
あの馬鹿は風邪をひいたことがないことと元気なことだけがとりえだったというのに…まさか欠席するなんて。
おかげで授業中寝てた俺がプリントやら手紙やらを届けるはめになってしまった。
…まぁ、いいけどさ。
誰だって風邪をひくことはあるだろうし。
病人には親切にしてやってもいいと思うし。
でもやっぱ面倒なんだよなぁー…



カンカンカンカン――…

「さてと。…で、何号室だっけか」

何回か来たことはあるが、部屋番号までは覚えていなかった。
‥まぁ探せばすぐに見つかるだろう。
そんなに部屋数が多いわけではないんだし。


違う。

隣も‥違う。

ここも…違う。


「あ。…ん?」

以前と変わらぬ【うずまきナルト】と癖字で書かれたネームプレート。
ちゃんと見つかった。
が、その下に【】という見慣れない名前が記されていることで不安になる。
…ここで合ってるよな?
前にナルトを呼びに来たときも確かここだったし。
ってことはって誰だよ?
ナルトん家に他の誰かが住んでいるなんて聞いたことないぞ?

疑問が疑問を呼ぶ。
…ぁーめんどくせぇ。
今回ばかりは考えても答えは出そうにないし、呼び鈴鳴らして用件済ましてさっさと帰るとしよう。


ジリリリリ。
「はぁーい」

…女の人の声?
ネームプレートとドアを交互に見やる。
ナルトん家、だよな。
ってことはこの声の持ち主がって人なんだろうか?
中性的な名前だからどちらでも通じるなぁとは思ってたけど…ナルトすげえな。
同棲かよ。


トタトタトタ。ガチャン!
「「ぁ(!)」」

驚いた。
目の前にいるその人は、前に雨が降っていた日、傘を貸してくれた人だった。
変な人から渡されたので使うのに少し抵抗があったが、結局濡れずに帰れたのはこの人のおかげだったわけで…

「…えと、これプリントと手紙です」
「あ、はいはいありがとう」

「「………」」


訪れる沈黙。
そういえば前もこんな感じだったな。

「えーと、ちょっと待っててね」
「ぁ、はい」

ガチャンとドアが閉まった。
なんだか取り残された気分だ…。
プリント渡したし、用は済んだから帰ればよかった。
まぁ特別予定はないからいいけどよ。



ガチャ。

「わざわざ有り難うね。これよかったら食べて」

差し出されたお菓子。
別にいいのに。
…しかも確かこれってナルトの好きなやつだし。
後でキレられるんじゃ…?
つーかこの人はなんなんだろう。
聞いてみるか?

「…あの、「へぶしっ!」
「ッナルト起きたの?」
兄"ぢゃん"…誰?」
「あーもう!ナルト鼻水大噴火してんじゃん!君、届けてくれてありがとう。まだ明るいけど、気をつけて帰ってね」
「ぁ…」

ガチャンという音と共に、扉が閉まった。
残ったのは手に菓子を持った俺だけ。
結局何も聞けなかった。
ナルトらしき人物の鼻声が「兄ちゃん」って言ってたけど、あの人男なのか?
…女みたいな感じだったけどな。
つーか、このお菓子ホントに俺がもらっちゃっていいのかよ?
あーそういえば傘、家に置きっぱだ。


「…やっぱ返さないとだよなぁ」

元来た道を戻る。
ナルトの風邪が治ったら、話を聞くとしよう。
ついでに傘も返してもらってしまいたいけど、お礼は自分で言いたいからやめとくか。
とりあえずさっさと家帰ろう…










ワン!
「キバ?」
「ん?おうお前かシカマル」

早く帰りたいと思う日に限って友達に会ったりするんだよな。
嫌いな奴じゃないから、別にいいけどよ。

「何してんだ?こんなところで」
「いや、今日ナルト休んでたからプリント届けに行ってきた帰り」
「あぁそっか。でもあいつがアカデミー休むとか珍しいよな」
「確かにな。お前はなんでここにいたんだ?」
「んー暇だったから散歩してた」
ワン…。


当てもなくほっつき歩いているよりもましだからか、キバは俺が行く方向に合わせてきた。
…ホントに暇なんだな。
そういや…キバはナルトと一緒に住んでいるさん?って人のことを知ってたりすんのか?
まさか…ね。


「キバさ、‥とかいう人のこと知ってるか?」
「な、さん!?なんでシカマルがさんのこと知ってるんだ よ!」

明らかに動揺している。
誰の目から見ても分かる。

「今日ナルトんち行ったらその人がいたからさ」
「あ‥さんホントにナルトん所に一緒に住んでたんだな
「つーかあの人なんなんだ?」
「いや俺も詳しいことは知らねえけど、さんはナルトんちに居候してて…
俺がさんと知り合ったのは迷子になってたさんを案内したのがきっかけだったん「ちょ、ちょっと待て。…今迷子って言ったか?」
「言ったぜ。マジで迷子になってたんだよ」
ワンワン!
「そうそ。で、街中歩いてるとちょくちょく会ってよ。なんかバイトは古本屋で…」

突然固まり、顔を赤くするキバ。
トマトのように真っ赤な顔からは今にも湯気が吹き出しそうな勢いで。
…どうしてそこで顔を赤くするんだ。
赤丸が傍で心配そうに見つめている。


「………お前なんか変だぞ?」
べべべ別に変なんかじゃねぇよ!さんとは何もないって!」

…なんかあったんだな。と、そう理解した。
あからさまな態度だ。何もなかったと言われて誰が信じるものか。
つーか自分から何かありますよ。ってばらしているようなもんだろうが。

「なぁ、あの人ってなん「あ!俺用事あるんだった!!じゃあまた明日なシカマル!」おい………って」

行ってしまった。
さっき暇だって言ってたのに何が用事あるだよ。



「…ナルトを問い詰めてやろう」


でないと腹の虫が治まらない。
今まで話さなかったところを見ると周囲に知られたくなかったみたいだが、別にいいだろ。
面倒だとか言ってられない。
あばいてやる。質問漬けだ。



早くナルトの風邪が治りますように。





その願いはすぐに叶うこととなった。
















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【あとがき】
外見から入ると先入観を持ってしまうけれど、その先入観がないとやっぱりさんは女の子に思われてしまうんだよってお話。
次の話からはやっと女の子キャラの登場です。
花だ花♪うふふふふ〜。

…出せるかな?(ボソッ

いやなんでもありません!張り切って出させて頂きます!!