きっと、無理してたんだと思う。







Dent De Lion





「ただいまぁー――‥」

友達と久しぶりに日が暮れるまで遊んで、やっと家に帰ってきた。
でもいつもなら「おかえり」と出迎えてくれる兄ちゃんの姿はなかった。
兄ちゃんが来る前は何とも思わなかったというのに、暗い部屋はどこか物悲しい。
…おかしいな。
兄ちゃん、この時間には家にいてご飯を作ってくれてたりするんだけど…。

室内には明かりも灯っていなければ、人影もない。
どこかに出かけているんだろうか?
そんな話、今日は聞いてなかったはずなのに…。
とりあえず手洗いうがいを済ませてから考えるとしよう。
そう思って部屋の電気をつけた。


「あ…兄ちゃん」

なんだ、いるんじゃないか。
いるなら返事くらいしてくれればよかったのに。
と台所に寄りかかるようにしている兄ちゃんを見て思った。

兄ちゃん?寝てるの?」

靴を脱いで兄ちゃんの方へと向かう。
けれど目の前に来てみても兄ちゃんは何の反応も示さなくて…
さすがに、ちょっとおかしいなと気付いた。
人差し指でツンツンつっついてみても起きないし、少し乱暴にゆさぶってみても起きない。
ただ、少し荒い呼吸が繰り返されるだけ。


………とりあえず、眠ってるならベッドに連れてかないとダメだってばよ。

力一杯引っ張って、兄ちゃんに触れて…
オレは気付いた。



…熱い。



服の上からでも身体が熱を持っているのがわかった。
ガッと額に手を当ててみる。

「…大変だ!」

やっぱり熱がある。
風邪だろうか?
とりあえず引きづりながらも兄ちゃんをベッドに運び、毛布をかけた。
タオルを濡らして絞って頭の上に置いておく。

「えっと、えっと、次は…」

落ち着けってばよ。
熱が出たときは身体を暖めて、薬を飲まして、眠るのが一番。
風邪薬は薬箱にちゃんとある。
でも、兄ちゃんは目を覚ましそうにないから無理だ…。

だからってこのままでいても仕方ない。
たとえただの風邪でも、悪化すれば命に関わることだってある。

「オレってば、めったに熱なんか出ないからなぁ…」

オレは風邪をひいてもすぐに治ってしまう。
きっと元気な風の子だから、風邪の菌がオレのことを怖がって寄ってこないんだと思うけど…


よく考えて、よく考えて…

でもでもすぐには名案が出てこなくて。


仕方ないから火傷しそうなくらい熱くなった兄ちゃんの手を握って、夜が明けるのを待った。















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【あとがき】
「熱さに気付く前に胸に気付けよ」
…なんてつっこみ入れたらあきまへん!(エセ関西人

この世界では救急車とかないけどそのへんは…どげんかせにゃあかん!
そのまんま東さん好きな人ー(はぁーい