辛い想いをさせてすまぬ。
無理をさせてしまってすまぬ。

しかし 正さねばならぬのだ。
すべてが終われば君を返すと約束しよう。


だから どうか わかってくれ。

君がいなければこの里も、他国も自然も世界さえも、滅びてしまうのだから――…







Dent De Lion





「ちょいと失礼するよ三代目」

一人の男が音もなく現れた。
老人は執務を進めていた手を止め、突如現れた男を横目で見ると、攻撃をしかけようした警護の者を下がらせた。
部屋に残ったのは、パジャマ姿の男に老人、二人だけ。


「…まだしばらく先のはずじゃが?」

ペンを置き、まず老人が口を開いた。
手を組み、眉間に皺を寄せ、男と視線を交差させる。
その表情はお互い真剣なものだ。

「その通りだ。今日はその件で訪ねてきたわけではない」

だが計画は予定通りか。と付け足して聞く男。
老人が肯定の意を示すと満足気に頷いた。



「今日はどういった用件で?」
「ふふ。そう急かさないでくれ。話が少々長くなりそうなのだ。とりあえず前に注文した茶菓子でも持ってこさせてくれ」

渋々といった様子で、老人は茶の用意をさせた。







身体を借りねば存在出来ぬ、

 そんなひ弱な存在なのだ。


負担をかけてすまないが、

 愛する者らを救うため 少し力を貸してくれ。
















読んでも読まなくてもいい話。
でも後々役に立つかもしれない、補足的役割を果たす話。

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