降水確率30%
そしたら傘を持ち歩きます。
Dent De Lion
「あっちゃー…やっぱり降ってきちゃったか」
ぽつぽつ降ってきた雨から逃れるように軒先へと駆け込んだ。
ザーザー降りではないけれど、それでも結構降っている。
買物袋片手に、カバンをごそごそあさって折りたたみ傘を取り出した。
青い傘。カバンの底には黄色い傘も入っている。
実は今朝、ナルトに傘を渡しそびれちゃったんだよね…
アカデミーから家に帰るまでにはきっとずぶ濡れになってしまうだろう。
だからアカデミーまで傘を届けに行く。
ちょっと買い込みすぎた荷物が重いけど、若さでなんとかカバーできるはず!
「あー…めんどくせー」
「?」
アカデミーの前の通りに差し掛かったところで、誰かがぼやく声が耳に入った。
雨の音でかきけされそうなくらい小さな声だったけれど、その声は確かにうちには聞こえた。
振り返ってみると、さっきまでうちがそうしていたように軒先で服についた雨水を手で払っている男の子が一人。
「「………」」
目が、合ってしまった。
1度目が合うと離しづらくなってしまうのはうちだけではあるまい。
だからといって自分から話しかけるなんて度胸、うちにはない。
(前みたいに誘拐犯と間違われたら嫌だし)
お互い視線をはずす事はなく、聞こえてくるのは傘や地面を叩く雨音だけ…。
「…傘ないの?」
沈黙に耐えられなくなって、自分から声をかけてみた。
「……ないです」
「…アカデミーの子?」
「……そうですけど」
なんだろう。この言葉と言葉の間は。
そして会話が続かないのはなぜだろう。
…どうしよう。目が離せない。
し、仕方ない。目が離せないなら…!
「え、と…これ、よかったら使って」
「…はい?」
「じゃ!」
ナルトのために持ってきていた傘を手渡して、アカデミーに向かって大またで歩き出した。
自分でもよくわからない行動だったが、とりあえずあの空気から脱せたからいいや。
ちょっと狭いかもしれないけれど、ナルトにはこの傘に一緒に入ってもらえばいいし。
「あ。兄ちゃん!」
とことこ走ってくるナルト。
雨にぬれちゃうから昇降口でそのまま待っていればよかったのに…
と思いつつ、傘の中に入ってきた時に濡れた頭を拭いてやれるようにハンカチをポケットから取り出した。
「ただいま」
「おかえり」
さあ一緒に帰ろうと、家に向かって歩き出す。
今日は何があったのか、楽しそうに話す姿を見ているだけで幸せな気分になれた。
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