立っているのに足が浮いてるみたい。
座ってるのに宙に浮いているみたい。
オレってば、どうしようもないくらい幸せだってばよ!
Dent De Lion
兄ちゃんが来てから燃えないゴミの量が減った。
一人でいたときはゴミ袋に入りきらないくらい多かったのに。
(ほとんどカップ麺の容器だったけど)
兄ちゃんが来てからは燃えるゴミの量が増えた。
一人でいたときはやたら少なかったのに。
―――‥でも、今の生活の方が…オレは好きだってばよ。
あの頃の自分は、野菜の皮や魚の骨を捨てる日がくるなんて思いもしなかったし、想像したことさえなかった。
ずっと1人きりで、無機質な物に囲まれて過ごすとばかり思いこんでいた。
ごはんはほとんど1人だったし。
家に帰ってもペットも、誰もいないし。
(トモダチが必ず言って貰える親“おかえり”という言葉もオレには
無かったから)
それが今や、「いってきます!」と言えば、当たり前のように「いってらっしゃい」と応えてくれる人がいる。
その喜び。
決して他人には理解できないだろう。
だからそのことが嬉しくって嬉しくって、毎日顔が緩んでしまうのは仕方がないことだと思う。
「…なーに笑ってんだよナルト」
「へ?別になんでもないってばよ」
「嘘つけやい!なんか良いことでもあったんだろ。…おいらだけにちょっと教えてみな?」
「……仕方ないなぁ。誰にも言うなってばよ?」
うんうん!と悪乗りするそいつの耳に手を添えて、息を吸った。
「わっ!」
「うぎゃあ!!!!」
「こらそこ、何やってんだ!」
その後、こっ酷く先生にしかられた。
ぶーぶー文句を言ったら、ゴツンッ!と思いっきりげん骨で頭を叩かれ
た。
‥久しぶりかもしれない。
いたずらも最近全然やってなかったし…
そう思うとなんだか笑いがこみ上げてきた。
「っ、お前はホントに…!!もういい。二人とも廊下に立ってろ」
「はぁ」「うぃー」
「返事ははいだ!」
「「はぁい」」
「………」
廊下に出て、授業が終わるのを待つ。
バレないようにふざけてみたりしたけれど、先生に怒られたからやめた。
窓から見える桜の木には、小さなつぼみがついていた。
もうしばらくしたらアカデミーは桜の香りに包まれる。
桜一色に染まるその景色は綺麗だ。
この桜を里のみんながお花見できるようにと、年に一度アカデミーは開放されている。
去年までは遠くから見ているしかなかった。
家族でお花見にきているその中に、入る勇気はなかったから。
「――‥今年は見に行けるかな」
「見に行くって、何をさ?」
「それはもちろん――」
「もちろん?‥何々なんだよ教えてくれよぉ」
「ひ・み・つ」
「えー!そんなんずるいよ!教えてくれよナルトー」
「お前らうるさいぞ!」
「あーもーお前のせいでまた先生に怒られちゃったじゃないか」
「何をぅ!やるかこの野郎」
「上等だってばよ」
ガラガラッ!
「いいかげんにしろ!」
「「スミマセンデシタ…」」
兄ちゃんはお花見とか好きかな?
好きだといいなぁー‥
「やっぱ今日のナルト、変だよ?」
「んふふ〜幸せだからいいんだってばよ〜」
「せんせーナルト君が気持ち悪いでーす!」
なんといわれようが関係ない。
オレはいま、幸せなのだから。
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でれでれナルト。