まったく…
どうなっちまってるんだ、と。







チョコチョコ大冒険!





「いけっ!そこからインコースだ!」

俺が賭けた5番のチョコボが先頭を突っ走っていた。
レースも終盤で、そのチョコボの優勝は決まったも同然。
あとは2位になるチョコボが当たればいいだけだが、望みがありそうなのは賭けた3枚のうち1枚だけ。
抜きつ抜かれつして…でもこのままいけば勝てる。


「うぉらー2番ー!突っ走れーー!!」

その辺で拾った新聞片手に声の限り声援を送る。
これがランクBやランクCのレースだったらここまで声を張り上げて本気になったりなんかしなかっただろう。
だがこれはランクS。
普通なら一般人は決して参加できないレースだ。
賭ける額もそれ相応だが、そのぶん貰える物がいい。
チョコボを持っていない俺がこのレースに参加できるなんて一生のうちにあるかないか…
となると、本気になっちまうのも仕方のないことだろ?



RuRuRuRu――RuRuRuRu――‥

「あー誰だよこんな時に」

ズボンのポケットの中で鳴り出したPHS。
出るべきか、シカトを決めこむべきか…迷うところだぞ、と。


RuRuRuRu――RuRuRuRu――…
 
鳴り止む気配はない。
いいところだが…仕方がないか。
目はレースに向けながら、ポケットをまさぐりPHSを耳元にあてた。

「あーもしもしレノですよ、と」
「レノ。今何処にいる」
 
げ。ツォンさんだ。
チョコボレースで賭けしてたなんてバレたらヤバい。
冷や汗がたらたら流れた。
あれ?
でも確か…俺、今日は有給取ったはずだ。
怒られる要因はない。
ビビるな俺、平常心だぞ、と!
 
「今どこにいる?」
「ゴールドソーサーですよ、と」
「そうか。悪いが緊急の任務が入った。すぐ本社に戻ってきてくれ」
「えっ、任務って‥今日俺有給っすよツォンさん!」
 
あと少しでこのレースも終わる。
今帰ったら俺は絶対に後悔する。
せめてあと5分だけでも待ってほしい。
今のまま行けば5-2で勝つ。
勝ってそれを交換してから…――
 
「ルードがヘリでそちらに向かっている。そろそろ着く頃だ」
「ハァー――…」
 
早すぎだ。
これじゃレースが終わったとしても勝ちチョコボ券を手に持ったまま任務に向かうことになるだろう。
脱力して座り込んだ。
さすがはツォンさんだよ。
てか、チクるなんて酷いよルード。
俺立ち直れなさそうだぞ…と。
 
仕事はスマートにこなすけど、たまの休みくらい仕事のことを忘れさせてくれ!
ちくしょう。
こうなったら新人いじってストレス発散してやる…!
 



 
ざわざわざわ
がやがや

 
「なんだ??………って、おいおいマジかよ」
「どうしたレノ」
 
モニターを凝視したまま動けなくなった。
こんな光景は初めて見る。
 
 
「ツォンさん…俺、現実拒否したいぞ、と」
「………」
 
ゴールまであと数十メートルと迫ったところで、チョコボが走るのをやめ、一斉に鳴き出した。
同じ方向を向いて、壁に激突しながら。
異様な光景。
レースどころの騒ぎではない。
騎手なんかチョコボの動きが激しすぎて吹っ飛ばされてるし…

 
「った、只今のレースは無効とさせていただきます。チョコボ券をお持ちのお客様は―――」
 
アナウンスがかかる。
普通、無効レースとなればブーイングや野次が飛ぶのがお決まりだ。
けれど、ここにいる誰もが異常な光景に目を取られていて、会場は静まりかえっている。
とりあえずPHSを切り、登録料金と賭け金を返して貰った。
まったくどうなってるんだか…
こんなことが起こったのはきっと初めてだ。
 
 




 
「レノ」
「…よう相棒。これ、どうなってるんだと思う?」
 
モニターを指差しながら、ははは。と乾いた笑いが漏れた。
いや、もう笑うしかない。ホント。
異常って言葉がここまでしっくり来る光景なんてきっとない。
血が出ても壁に向かっていくチョコボを見ていたら、背筋がぞっとした。
こいつら全員病気かなんかで狂ってるんじゃないかと思うほど、チョコボたちは必死で鳴き続けている。
 
「…ここでも、か」
「ここでも‥ってことは他の場所でも何か起こってんのか!?」
「今回の任務も関係している。行くぞ」
「………了解、と」


有給は今度3倍にして返してもらおう。
今は目の前の仕事に向き合って。















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【あとがき】
レノだけはどうしても出しておきたかったんだッ!!
というわけで、レノと相棒です。
プレステでFF7をやっていた時からレノは好きなキャラでした。
(AC見てからますます好きになったけど)

そういえばレノの声イメージ通りだったけど、
…あの声優さんってクレ○ンしんちゃんのひろしの声なんですよねー
最近しんちゃんを見るとレノが鼻を伸ばしてる声が聞こえてきます…
 
それでも好きだー!